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白ごはん

どんな相手でも、好き嫌いを言わず、いつも、定位置についている。その白い粒は、何色にも染まり、自在に形を変える柔軟さをもち、どんな具材とも、絶妙にまざり合い、主役を演じることにこだわらない。食卓のレギュラーの座は、不動のものなのに、いばらない...
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足音

いつも、気にもとめず聞いていた足音に、「どうして?」と、わけを教えてもらった。どうして、はや足でバタバタ言ってるの?「忘れ物をして、あわててるんだ。」どうして、大きな音でドンドン言ってるの?「腹が立って、ついつい力が入ってしまうんだ。」どう...
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ミとファ

「ド」・「ミ」・「ソ」は仲よし。みんなで交ざり合って一つになる。「ミ」と「ファ」はお隣どうし。でも、交ざり合おうとしない。黒鍵も邪魔していないのに、仲よくなれない。近すぎるのが、よくないのかなあ。少し距離があるくらいが、いいのかも知れない。...
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29歳のときでした

- 8月初め、南からの寒風が吹く街の中で、ぼくは途方に暮れていた -仕事に就いて5年目、少しずつ貯まっていた貯金をはたいて、学生の頃から夢見ていた海外旅行に行くために、成田行きの列車に乗った。旅行雑誌で見つけた、ニュージーランドでのホームス...
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すぐれものたち

ケイタイの、スヌーズボタン3回目を止め、寝る前にセットした、温風ヒーターがぬくめてくれた部屋の窓側で、大きなあくびをしながら、布団からはい出た。結露のついたガラスをこすって、木々のゆれる東の山並みに目をやりながら、冷蔵庫から出した、夕べの肉...
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大じょうぶ、大じょうぶ

結婚したら、妻が夫にしてくれる。子どもが生まれたら、わが子が親にしてくれる。今から考えなくていいよ。考えてなれるもんじゃないから。なるようになる。なるようにしかならないから。そう言ってくれた、先輩からのアドバイス。新しい一歩をふみ出すとき、...
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石けん

箱から取り出した石けんを、手のひらにのせた。いい香りが、ぼくの鼻の奥に届いてきた。深い彫りを目立たせ、堂々としていた。その日から、朝から夜まで働き続けてくれた。激しくこすられ、丸っこい体を泡だらけにし、家族の体をきれいにしてくれる。身を削ら...
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あるんですね

うだる日の仕事帰りに、一杯の冷えたビール冬支度をはじめた大地で、可憐にゆれるコスモス凍てつく北風の中で、小さな使い捨てカイロクシャミと鼻づまりがない、三月の寝床のわたしけっこうあるんですね、「小さなしあわせ」って
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わすれていました

母に手を引いてもらって、入学式に行ったことを、叱られたくなくて、先生にウソを言ったことを、わが子に、後輩に、知ったかぶりしていることを、いつも誰かと比べている、つまらない人間であることを、わすれていました。わすれていました。わすれている人が...
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どちらもきれい

走っていると一番になれそうな気がして歩いているとおいていかれそうな気がしてでも、走っていた並木通りも歩いている、川沿いの土手もどちらもきれいです走り続けてきたぼくはいまは、歩いていますいつか、また走ってみます